コンビニのお弁当は、レンジでチンして温かくして食べられます。しかし、それはどうも風情が無い気がします。コンビニ弁当に風情を求めるのは間違いでしょうけど、幕の内弁当までレンジでチンして暖めてしまうのは、ちょっとどうなのかなぁと。
冷えた幕の内の、少し濃い味のおかずをつまみつつ、固くなった冷たい俵型のご飯を箸で切り取るようにして持ち上げて頬張り、熱いお茶で流し込むと、冷えた幕の内弁当が美味しいだけでなく、お茶の香りも引き立つような気がします(ちなみに上の写真は、冷えても美味しい駅弁です)。
ところで最近、回転寿しによく行きます。食べる量を自分で調節できるし、回っている鮨をつぎつぎにとってしまえば、短い昼休みに手早く昼食を済ませられるため重宝しています。
回転寿司屋で食事をしていると、まわりの人たちはタッチパネルをつかって次々に注文し、回転している鮨にはほとんど手をつけていないように見えます。
食べたい鮨が回っていないという他に、「握り立ての新鮮な鮨を食べたい」という気持ちからでしょうけど、鮨は握り立てがうまいというわけでもないような気がします。
元来、鮨というのは家へみやげに持って帰ることも出来るほどのものだし、ちょっと置いといたほうがいいという人もいるわけだから、それほどあわてて食べなくてもいいけどね。「男の作法」著:池波正太郎
たとえば、通夜のあとの会食に鮨が用意されていることがよくあります。寿司桶に入れられた出前の鮨は、多少時間が経って乾いた鮨です。しかし、案外そういった鮨はうまいものです。
即物的なことで言うと、一度冷えたものを温めて食べるのは電気の消費につながりますし、回転している鮨に誰も手を付けなければ食品ロスにつながります。
チェーン店は、冷めた方が美味しいお弁当や、時間が経った方が美味しい鮨を出して、そういった弁当や鮨を積極的に売り込んでいって欲しいと思います。
「温かいお弁当」や「握りたての新鮮な鮨」は魅力的な売り文句ではありますが、冷たくなったお弁当や、時間が経った鮨を楽しめる情緒は心の中に持っておきたいと思います。
男の作法(著:池波正太郎)→Amazon.co.jp