子供の頃。それまでの短い人生の中で造り上げた人生観が、ガラリと変わったような出来事が、誰にでも一つや二つはあると思います。晩年の子供(著:山田詠美)は、そんな出来事の短編集です。
誰かが幸せになる物語とか、泣き所がある物語とか、そんな物語はわかりやすくて人気もあるので、作り方のセオリーなんてものも確立しているけれど、「子供の頃に感じた、あの思い。」のような、嬉しくて悲しくて背筋が凍るような冷たさを感じて、その他雑多な複雑な思いを感じつつ、今までの自分が崩壊してしまうような、あのとき感じたあの思いは、なかなか表現できません。
その複雑な心の動きを、山田詠美さんは文章で的確に表現しています。こんな表現力を持っていたら、きっと、自分が感じていることを他人に共感してもらえるのではないかと、とても羨ましく思い、山田詠美さんの本を山ほど読んで、ほんの少しでも表現力を盗み取ることができればと、強く願っています。
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