日本の電子書籍が急成長する可能性を秘めたkoboが、楽天から発売されました。
日本では、今までにもSONYやシャープ、富士通といったメーカーが電子書籍業界に参入していました。しかし、欧米での電子書籍の普及に比べて日本の電子書籍普及は遅々として進んでいません。
しかし、楽天がkoboを発売しました。楽天が電子書籍業界に参入した事で、日本の電子書籍普及がいっきに広まる可能性があります。
楽天と、大手メーカーの一番の違いは、販売インフラを持っているかどうかというところです。楽天は、楽天市場というネット通販サイトを運営しており、日本最大の通販サイトと言っても過言ではありません。
つまり、大手メーカーが、電子書籍端末を作って顧客を集めるのに対して、楽天は、すでにたくさんいる顧客の中に電子書籍端末を投入することで、電子書籍の販売を促進しようとしています。
もちろん大手メーカーにも顧客はたくさん居ますが、大手メーカーの顧客は、パソコン事業の顧客だったり、家電事業の顧客だったり、企業間取引の顧客だったりと、ネット通販に特化した顧客ではありません。しかし、楽天は、そのほとんどがネット通販の顧客です。ネット通販を普段から利用している顧客達の中に電子書籍端末を投入し、電子書籍を普及させる事業は、大手メーカーに比べれば容易なはずです。
そんな理由もあり、今まで、日本メーカーの電子書籍専用端末の販売に懐疑的だった私が、koboを予約購入しました。
届いたkoboを開梱すると、kobo本体、USBケーブル、小冊子(スタートアップガイド)が入っていました。必要な物がシンプルにまとめられており、好印象でした。しかし、USBケーブルのみだったので、充電はMacやPCからしかできないようです。コンセントから充電する機器もあると良かったです。
koboの電源を入れ、利用言語の選択をすると、「USB経由セットアップ」という画面が表示されました。koboを使い始めるには、Macに「Kobo Desktopソフトウェア」をインストールしたあと、Macとkoboを接続する必要がありました(Windowsでも可)。
koboのサイトからダウンロード&インストールしたKobo Desktopを起動して、Macとkoboを接続したあと、セットアップを実行します。セットアップにはしばらく時間がかかるので、すぐに電子書籍を読みたい気持ちを我慢しつつ、ゆっくり待ちます。なお、年内にパソコン不要で動作可能にするとの発表がありました(「koboで“読書革命”」楽天の三木谷氏/ITPro)。
セットアップが完了すると、koboにリリースノートが表示されます。リリースノートは、古いバージョンのkoboのOSからの差分情報のようです。koboは日本で始めて発売されるものであるため、開発中のOSからの差分や、海外で販売されている同じOSからの差分ではないかと思います。始めて使う上で差分を気にする必要はないので、じっくり読まず閉じました。
電子書籍を読み始める前に、koboのカバーを購入していたので取り付ける事にしました。
カバーには4つの爪がついており、爪でkobo本体を固定するようになっています。一度取り付けたら簡単に外れないようになっています。
カバーは、ゴムの板のような、よくしなる素材でできています。内側は起毛加工されているため、kobo本体を傷から守ります。カバーが無い方がkoboを操作しやすいですが、koboを鞄の中に放り込んで持ち歩くには、こういったカバーがあった方が安心です。
koboの書籍のラインアップですが、これははっきり言って少なすぎます。例えば、文学では、私が好きな三島由紀夫や谷崎潤一郎、向田邦子、伊坂幸太郎で検索しても、まったくヒットしないか、ほんの数冊しかヒットしません。太宰治は青空文庫のものばかりです。マンガは、ゆうきまさみ作品や、SPRIGGANが見つかりません。さらに、技術書は結城浩さんの本がまったくありませんし、ほとんどが海外の書籍です。
しかし、国内で150万冊を集めることを当面の目標とする(楽天の電子書籍端末「kobo Touch」は7980円、国内150万冊目指す/ITPro)とのことでしたので、国内の電子書籍端末普及のために人柱になったつもりで、ぐっとこらえるしかないでしょう。
読みたい技術書がなかったため、結城浩さんの「Java言語で学ぶデザインパターン入門」を自炊してPDF化したものをkoboに入れてみました。開く事はできましたし、きちんと表示できましたが、文字サイズの関係から、読むに耐えない状態になりました。文庫本やビジネス書程度のサイズまでならkoboで読むこともできそうですが、技術書のような大きなサイズの本をPDF化してkoboで読むのは無理があるようです。
そんなわけで、良い面、悪い面、いろいろ書いてきましたが、今後日本で電子書籍が広まるために、koboは重要な役割を果たすと思います。iPhoneも当初は電波の入りが悪かったり、固まったり、酷い物でしたが、それでも楽しく使い続けていたら、誰にでも楽しめる素晴らしい端末になりました。それから比べれば、koboはずっとましです。
これからOSが改良されて、書籍数が増え、どんどん良くなって行くように祈っています。
さて、ここまで読まれたかたはおわかりかと思いますが、koboは楽に色々な本を読める電子書籍端末ではありません。将来の希望の光が見えるものの、少し忍耐が必要です。そのため、新しいものが好きな人には飛びつく事をお勧めします。そうでない人は、一歩踏みとどまって様子を見る事をお勧めします。
楽天の発表が実現すれば、年内にはkoboのOSが改良され使い勝手が良くなるはずですし、販売される書籍の種類も増えるはずです。
新しいものに手を出して、日本の新しい市場が出来上がって行くことにワクワクするか(もちろん失敗することだってある)、冷静に見守るかは、あなた次第です。
kobo→楽天市場