必要なものだけをじっくり時間をかけて選びぬいて、それを大切にながくながく愛着をもって使っていく。りえさんの服、持ち物、道具を見ているとその価値観が伝わってきます。そして、モノに対し、なんにでも使えるという効率性は一切求めないのです。珈琲をドリップするためだけのポット・・・それだけのために作られた道具を愛しているようです。しあわせのパン P.177
10ヶ月ほど前。映画「しあわせのパン」を観ました。その後、原作の小説を読み、ますます、しあわせのパンを好きになりました。
原作の中でも、私の心に深く刻み込まれているのが、冒頭の文章です。
心が忙しくなると、この言葉を頭の片隅に追いやってしまい、どんどん心が小さく苦しくなっていくのを感じます。そうして、限界を感じた頃、なくしたものを見つけるように、この言葉を思い出します。
この言葉を思い出したからといって、目の前にあるいろいろなことが勝手に解決するわけではありません。
しかし、自分の心を締め付けていた何かが、ふわっとゆるみ、ひとつひとつのことに、丁寧に向き合うゆとりができます。
これから先も、何度も忘れ、何度も思い出し、忙しさで小さくなってしまった心を救い出すことでしょう。