身なりのしっかりした彼が、どういうわけか、古ぼけたペンを使っている。「このペンはどうしたの?」と聞くと、「実はこのペンは、子供の頃に、ある団体に参加していて、そのときの記念品なんだ。」と、ペン1本から、今の彼からは想像できないキラキラした体験を聞くことができる。
思い出や思い入れのある、ペンや文具がたくさん入った、他人の筆箱を見てみたい。気になるあの人の私生活を覗きたい欲求にも似た思いで、他人の筆箱の中身を見ることができるのが、今回紹介する筆箱採集帳です。
ブングジャムの、高畑正幸さん、他故壁氏さん、きだてたくさんの共著です。
筆箱とその中身について、カラー写真と解説が掲載されています。59人もの筆箱が紹介されているのに、1つとして同じような筆箱がありません。筆箱を持つ人それぞれの個性が垣間見えて楽しいです。
私の好みはやはり、シンプルで上質な物。しかし、女の子らしい柄の筆箱や、学生さんらしい筆箱、建築家さんらしい筆箱など、自分がふだん見ることがない人たちの筆箱も、見ていて楽しいです。
筆箱1つから、その人の生き方が見えるなんていうと大げさかもしれないけれど、その人にとって、大切な出来事、楽しい出来事、悲しい出来事、いろいろな出来事の中で、寄り添うように使われているであろう、その筆箱とペンや文房具たちは、やはり、見ていて楽しいです。
中でも一番気になったのは、保育園園長さんの筆箱の中身。緑のチューブに黄色いキャップのヤマト糊が入っていて、この糊で子供たちに何か作っているんだろうかと想像すると、心が温かくなりました。
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