昨年末。ITmedia オルタナティブ・ブログで1つの記事に出会いました。
買う前は広告宣伝や広報活動を通じて(言葉は悪いが)ブランドイメージの刷り込みや商品のアピールを徹底して行い,顧客接点を最大化する努力をする。かかる費用は広告宣伝費ないし販促費として柔軟な運用が許されることが多い。
一方,買った後は直接コンタクトを避けるために説明書やサイトに記載する電話番号もできるだけ目立たないように配置し,顧客接点を最小化する努力をしている。そこでかかる費用は一般経費として計上され厳しいコストカットの目が向けられる。驚きの反常識!ザッポス流マーケティングの真髄とは:in the looop:ITmedia オルタナティブ・ブログ
しかし、ザッポスという会社は、お客様からの電話を、お客様に忘れ難い感動体験をしていただく絶好のチャンスとして見ているという考え方に強く惹かれ、ザッポスの本をすぐに読みたいと思い立ち、年末から年始にかけて、「ザッポスの奇跡(著:石塚しのぶ)」を読みふけっていました。
目次
- 第一章 競争の本質が変わる
- 第二章 サーッビスを越える企業、ザッポス
- 第三章 感動サービスを培養する、企業文化の土台
- 第四章 経営戦略としてのサービス文化
- 第五章 企業は働く人々がすべて
- 第六章 「個」を活かすサービス
- 第七章 変化の火種になる
- 感謝の言葉
顧客満足度の向上
おそらく、多くの企業で、顧客満足度の向上を目標の1つにしていると思います。
しかし、現実は、「他社の製品と比べて、当社の製品は、この機能が付いています。」とか「当社のコールセンターの平均受付時間は、他社より何パーセント優れています。」とか、はっきりいって、目くそ鼻くその世界で頑張っていることがほとんど。
その数字をきっかけに、その製品をお客様が買うかもしれない。しかし、次回、製品を購入時に、過去の数字を理由に製品を買うことは、まずありえない。
ザッポスにおける顧客満足とは、お客様にWOW(驚嘆)を提供すること。そして、お客様と一生涯のつながりを作るためには、会社のルールを破ってもかまわないそうです。
従業員満足度の向上
多くの企業で、「お客様のために働きなさい。顧客満足度を向上させなさい。」とされていると思います。
しかし、現実は、コスト削減により十分な資金や時間なしに、お客様のために働くことを要求されます。その結果、従業員は自分の身や心を削って、それこそ奴隷のように働かなければなりません。そんなことを続ければ、従業員は心を無くしていきます。
ザッポスでは、お客様に忘れ難い体験をしていただくために、従業員に幅広い決裁権が与えられており、何時間でも対応することが許されているそうです。さらに、従業員それぞれの個性を活かしたサービスを提供することも許されているそうです。
満足度向上のための、したたかな戦略
顧客満足度向上のため、従業員に幅広い決裁権があたえられており、好きなように活動できる。そんな夢のような会社ですが、単に、お客様や従業員の満足度を向上させているだけではありません。
それぞれの満足度を向上させることにより、お客様はリピーターになり、顧客維持コストが減少。さらに、お客様が口コミすることで、顧客獲得コストも減少。従業員満足度を向上させることで、離職率を下げ、優秀な人たちが会社に留まるようにしています。
さらに、満足度向上のためにかかる費用については、顧客維持・獲得コストや、良い新入社員を獲得するコストと天秤にかけられ、きちんとバランスがとれるように計算されているようです。
BlogやTwitterがあるから成立する口コミ
話しが相当過去のことになりますが、江戸時代。商人はお店を開いた地域で商売をしていました。ですから、その地域の人たちは、その商人の人柄も含めて知っていたし、地域の人たちどおしでも会話がされていた。だから、江戸時代には、品物が良く顧客満足度が高いお店が繁盛したのではないかと考えます。
昭和に入り、企業は複数地域で商売をするようになりました。新聞・雑誌・テレビを利用し、大々的に宣伝。多少品物が悪かったり、従業員の態度が悪くても大丈夫。物がない時代ですから、どんどん売れた。しかも、地域をまたいで商品の質の悪さが口コミで広がる頃には、次の商品を販売していた。だから、商品サイクルを早くし、上手に宣伝することが大切だったのではないかと考えます。
現代。企業は複数地域で商品を販売しています。新聞・雑誌・テレビを利用し、大々的に宣伝もしています。昭和と違うのは、顧客がブログやTwitterを通じて、地域をまたいで、あっという間に口コミ情報が広がります。だから、良いものはすぐに流行し、悪いものはすぐにダメになる。そのうえ、従業員の態度まで評価されるので、江戸時代と同様、品物の良さと顧客満足度の両方が必要とされる時代になったのではないかと考えます。
- 江戸時代:1商人、1地域で、地域内の口コミは簡単に広がる
- 昭和:1企業、複数地域で、地域間の口コミが広がりにくい
- 現代:1企業、複数地域で、地域間の口コミは簡単に広がる
つまり、現代は、口コミの重要性が、非常に高い時代になったのではないかと思います。
そのため、ザッポスのような顧客を驚嘆させるサービスは、口コミによってあっという間に人々の間に知れ渡り、新しい顧客をもたらすのではないかと思います。昭和の頃やインターネットがはじまったばかりの頃であったら、ザッポスのやりかたは成り立たなかったのではないかと思いました。
まとめ
ここまで書いて、ぜんぜんまとまりそうにない雰囲気ですが、ザッポスの奇跡1冊で、しばらく語り続けられそうです。しかも、既成の考え方を、ことごとく打ち砕いてくれますので、なかなか考えがまとまりそうにありません。
ただ、1つ言えること。そして、今からでも始められそうなことは、「私の目の前に居る人と、生涯のつきあいになるために、自分は何ができるか?」ということを、常に考えること。ザッポスのように十分な決裁権が与えられていなくても、それを常に考えて、できる範囲で行動する。
そうすることで、新しい希望が見えてきそうな気がします。
そしてもう1つ、私も常に気になっている問いが、ザッポスの奇跡の中に書かれていました。
「会社が利益を稼ぐために人が不幸になっていくなんておかしいんじゃないか?」(ザッポスの奇跡 P.8)
ここで言う人とは、お客様だけでなく、従業員も、経営者も、株主も、その他社会の人々みんなのことです。
この問いを解決するために試行錯誤している企業がザッポスであり、今のザッポスのやりかたを垣間みることができるのが、「ザッポスの奇跡」です。
理想と現実に苦悩している、すべての社会人に、おすすめの一冊です。
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